重水と軽水って?
私たちが一般的に水と呼ぶ物質は、化学の言葉で軽水と言われます。
軽水は、軽水素と酸素からなる普通の水を言い、重水は、水素の2倍の質量を有する重水素と酸素からなる水を言います。
化学記号にすると、軽水はH2O、重水はD2Oとなり、このDが重水素を表します。
2HとOで構成される軟水と、2DとOで構成される硬水は、物質的性質や用途が異なっています。
重水について
重水は、自然界にほとんど存在せず、人工によって作られた水です。
重水の用途は、原子力発電所の原子炉において、減速材として使用されます。
理由は、水素が、原子炉で用いられる高速中性子を熱中性子に減速する能力に優れているため、水素を大量に含む重水が重用されています。
この減速材としての働きは医療にも応用されており、放射線治療の現場においても利用されています。
重水は、飲料用には適していません。
重水を大量摂取すると、生体内反応に異常をきたしてしまい、生命の危険が伴う事態となるでしょう。
もし重水を摂取してしまった場合、体重の10%以上の重水が体内に取り込まれてしまったら命が危ぶまれる可能性があります。
このように、重水は、私たちの飲料水としてではなく、エネルギー技術を中心とした工業用の水として幅広く活用されています。
重水によって、私たちの技術が育まれていると言えるでしょう。
軽水について
軽水は、私たちが普段摂取している水をいい、地球上に存在する自然界の水の99%以上を占めています。
軽水という名称は、あくまで化学上、重水と比較するために生まれた言葉なので、飲料用や料理用などに用いる水のほとんどが軽水にあたります。
普段摂取している水も、100%が軽水ではなく、ほんの微量ながら重水も含まれています。
たとえ自然界の水を大量摂取しても、この程度の重水でしたら身体への悪影響はほとんどないと言われています。
重水が私たちの技術を育んでくれるとしたら、軽水は私たちに直接、生命を育んでくれる水という存在になるでしょう。